子どもの保育園で発表会があった。元々土曜日開催だったのが、直前に体調不良の園児が続出し延期になって、平日夕方にクラス別に開催の変則日程になった。12月の月末ということもあり、仕事はいろいろ押し迫っているが、子どもの発表会より大事な仕事は、たぶんない。あれこれ片付けて、もしくは後回しにして、当日早退する手配をする。
流行り病の影響で、園児1人につき保護者席2名まで出席が許される。夫は仕事がバタついているようだったので、私は
「見に行けないなら、ばーばを呼ぶよ。」
と声をかけたのだが、夫は
「そりゃあ見たい。」
と言うので、夫と私の名前で出席の返事を出した。
子どもは発表会に向けて猛練習をしていた。おそらく保育園でも毎日練習し、家でも発表会の歌を爆音で熱唱していた。
「きょうは、はっぴよかいの、れんちゅうちたの」としょっちゅう言っていた。子どもが言うと、「はっぴょうかい」と発音できずに「はっぴよかい」になる。ぴよぴよ……。かわいい。
子どもはやる気満々だが、親としては不安であった。去年も、一昨年も、子どもは発表会本番で棒立ちで固まったまま動けなくなっていた。練習では元気よくやっていたのに。あがり症なのだ。そうだね、分かる。緊張するよね。というわけで、今年も棒立ちで固まる子どもを見る覚悟をしていた。
いつものブログよりも前置きが長いのは、全部ひっくり返るからである。
発表会当日の朝、バタバタと朝の準備をして、気がつくと子どもが号泣している。
「パパ、はっぴよかい、こないのー!!」
なんだって?? 聞いてないぞ! 夫に聞くと、
「仕事で発表会に行けなくなった。」
と。は?
もう家を出ないと私が遅刻する時間なのに、子どもはまだ朝ごはんのパンを食べ終わっておらず、着替えておらず、大号泣である。詰んだ。泣き止まないと全てが進まないが、これは泣いても良い事案である。
仕方がない。母に電話をする。
「急だけど、夕方空いてる? 今日の夕方、保育園の発表会なんだけど、パパ来れなくなっちゃってさ。うん。うん。ほんと? ありがとう! 良かったね、ばーば、発表会来てくれるってさ。」
電話が終わる頃には、子どもは泣き止んでいた。ばーばは偉大である。
どうにか不機嫌な子どもを保育園に連れていき、先生に「パパの代わりにばーばが来ます」と話し、仕事に滑り込む。そういえば、夫から謝罪の一言も聞いていない。だいたい、行けないと言うのが当日の朝というのも気に食わない。前日の夜には判明していただろうに。そしてフォローは全て私がやるのか。控えめに申し上げて最悪である。
怒りが収まらないが、昼休み返上で仕事をして早退し、保育園へ向かった。初めて保育園にやってきた母と合流。母は嬉しそうに来てくれた。ありがたや。保育園の中からは、子どもたちの最後の練習の歌声が聞こえてくる。
発表会は、控えめに申し上げて最高だった。衣装を着てテコテコと歩いて出てきて、かわいい。子どもはセリフも大きな声で言えた。合唱は声量に圧倒された。去年、緊張して棒立ちだったのはうちの子だけではなかったし、中には泣いてしまう子もいたのだが、今年は泣く子もおらず、みんなニコニコ。成長著しい。素晴らしかった。
晩ごはんを作る気が起きなかったので、母、子ども、私の3人で、ファミレスで晩ごはんを食べた。母も私も道すがらも食べながらも何度も
「上手だったねえ!」
と言った。子どももばーばと一緒が嬉しいのもあり、ごきげんだった。3人ともたらふく食べた。
母を駅で見送り、
「おなかいっぱいで、あるけなーい。おんぶ!」
と言う子どもをおんぶして2人の帰り道。子どもが
「どうちて、パパみにこなかったの?」
と言う。うむ、もっともだ。私も聞きたいよ。
「お仕事だって言ってたよ。でも、『どうして?』ってパパに聞いても良いと思うよ。」
子どもの返事はない。眠そうである。私は続けた。
「発表会、上手だったねぇ!」
すると、子どもは答えた。
「あたち、はっぴよかい、ちゅき。」
そうか、それは良かった。本当に良かった。