とらぬたぬきの皮算用

中小企業診断士を目指しています。

診断実習5社目を終えて

養成課程の診断実習は5社。1社あたりだいたい1ヶ月かけて実習を行う。その5社目が終わった。

実習先のことは守秘義務があって書けない。したがって、個々にいろいろ感想があるけれども書かない。断片的、抽象的にならざるを得ない。

 

実習では今まで全く関わりのなかった業界・業種の会社のことを知ることができた。2次試験の事例Ⅳで全く読めなかった財務諸表を少し読めるようになった。大変だったし、勉強になった。あと、5班とも残業少なめホワイト班だったので、育児もある身としてはありがたかった。というのは大大大前提で、これから思ったことを書く。実際、卒業してから読み返して「こんなことを考えていたのかぁ」と思うために書く。

実習が終わるたびになんとなく虚無感があった。どこまでいっても、実習先の会社を題材に、机上の空論をこねこねしているだけのような。「実習」だからそれで良いのかもしれないけれども。これ楽しいのか? 楽しくないのは、中小企業診断士向いていないのでは? 

虚無感の原因を考えてみたが、考えたことがまだ答えが出ていない。そのままに書く。

文脈・背景の理解不足

いちばんその企業のことが分かるのは、その中で働いている方である。学生は情報収集をするけれども、業界の暗黙の了解みたいなのは結局よく分からなかったりする。実習班の中に専門家がいなければ、提案したことが「それはできない」と言われておしまいということもある。

中小企業のITレベルは多様

中小企業のITレベルは本当にさまざま。コンビニ勤務時代にオーナーやオーナー志望者とお話したり、中小食品工場で働いていたので、私自身はそういう感覚がある。実習先も、本当にレベルはまちまち。ホワイトカラーの人は当たり前に毎日PCを使うけれども、現場の人には当たり前ではない。ITに強い中小企業診断士は重宝されるだろうなと思う。ITツールの提案も良いのだけど、入れるならそれ相応のフォローが必要。で、ITできる人はもう調べて取り入れてやっている。

ロジックは大事だと思うけど、もっと提案に時間をかけたかった。

報告書の流れとしては、環境分析から問題点・課題の特定、戦略の策定を行い、提案する。この順番は報告書のお作法だからしょうがないらしい。でも、大抵は環境分析から戦略の策定までに時間をかけすぎている気がする。問題点・課題の特定の部分のロジックが合わないというので議論が空転する。

その結果、提案の中身は詰め切れないことが多いし、提案の内容に関して指導が入ることはあまりなかった。(だからこそ、残業少なめホワイト班だったのかもしれない。)

「提案の内容が刺さるかどうかは誰にも分からないから、指導しようがないのではないか。」という意見も聞いた。うーん、それもそうだけどさぁ。

プロセスが正しいかどうかは検証できるけれども、答えが正しいかどうかは検証できない。プロセスが正しければ、コンサルタントは言い訳がきく。でも、社長は提案が聞きたいんじゃないだろうか。提案が答えになるかは確かに今は分からないけど、もっと提案に時間をかけたかったなぁ。

実行支援は実習の範囲ではない

こういうのやったら御社はもっとよくなります!と報告会でパワポを使って提案して、それで実習はおしまい。評価は届くが、その後どうなったかは、分からない。虚無感のいちばんの原因はこれかもしれない。

隣でPC使ってつきっきりで30分お教えしたら、これはできるようになるだろうけど、発表では伝えきれないなーなどと、思うこともある。

これはもう、卒業してから実行支援の側に回るしかないんだろうなあ。

7人リレーか7人8脚か

1班だいたい7人なのだけど、7人で分担しているからできることもあるし、7人で議論していて何も決まらないという時間もある。とりあえず話し終わるまで待っている、という時間もあるし、「さっきから1時間、昨日と同じ話をしていますよ!」と申し上げたこともある(剛腕を反省している)。7人って、一度に議論するのには多すぎるような気がする。

(ただ、今年の同期は本当に優秀でフリーライダー化する方がいらっしゃらないし、ぶつかる人がいないので人数が多いと感じるのかもしれない。先輩方には様々ご苦労があったようである。)

ステークホルダーが多いし、毎回の実習ごとに流派が変わる。

提案は社長に対して行うし、社長が評価もされる(成績に反映される)。個人の評価は先生がされる。実際に診断実習で発言量が多いのはTAの先生だったりする。どちらに向かって調整するのか、悩ましいところである。

実習5回で一貫した指導がされるわけでもない。前回正しかったことが今回間違いだったりするし、ぶれるということは些末な問題なのかもしれないが、議論して定めようとすると時間がかかる。よく言えばいろんな方法を学べるのだけど。

Wordのバカー!問題

原因が分かるものと分からないものとあるが、Wordの書式が揃わない、インデントが揃わない、「エラー! 参照元が見つかりません。」が出る、などが頻発する。

複数人がそれぞれの環境で作文するので仕方がないのけど、少しはなんとかならないかなぁ。入学時にPCを購入することが多いはずなので、入学時にWindows推奨って案内を出してもらうとか、Microsoft 365強制加入とか、Windowsでもバージョン指定をするとか、少しでも環境を揃えたほうがいいような気がする。

養成課程入学のために新しくPCを用意される方には、Wordを使うことになるのでWindowsをおすすめする。Macが悪いわけではないのだけど、Mac版のOfficeの挙動がよろしくないようである(Macユーザーではないので聞いた話である)。予算に余裕があるなら、ノートPCはWindowsにして、サブにiPadを持つのが最強かもしれない。

 

というわけで、文句ばかり書いたのだけど、大前提として、診断実習は本当に勉強になった。これからの糧になるだろう。きっと。たぶん。

あまりに文句を言ってしまったので、良かったことも書いておく。

知らない業界業種のことを知ることができた

とにかく勉強になった。未経験の業種でも、何かご支援することはあると思う。

最後までけんかしなかった

えらい。

班内で意見は言うけれども、感情的になる人がいなかった。まあまあ変わった人がちょくちょく見受けられるのは否定しないけれども、それを許す懐の深さ。得意なことを人に教えたり、手を上げてやったりする精神。そういったものを同期みんなが持ち合わせていた。

けんかするほど仲がいいとか、雨降って地固まるとか、タックマンモデルの混乱期とか、いろいろと言うのだけど、1ヶ月の実習であれば、けんかせずにやり遂げるほうがアウトプットは良い気がする。

やりたかったことはだいたいできた

班長2回、財務、食品販売(飲食)、食品製造、SNS・HP活用、とやりたいことはだいたいできた。実習は5社やるので、いろいろ試せる。

班員7人いるので、苦手なことから逃げ続けることもできる。でも、財務をやって、ノブタカさんに全部教えていただけたのは良かった。2次試験の事例Ⅳはただの計算問題ではなかった。会社の存在した証だった。

唯一、そういえばやり損ねたなと思ったのは、人事の提案。実習先はアルバイト活用が上手なところばかりで、特に提案することがなかった。でも、それは自分の中では事例が溜まっているから、特に実習でやらないといけないというものでもないし、まあいいかな。

5班ともホワイト班だった

作戦と成り行きによるものである。

①1班目で班長を引き受け「班長をやりますが、18時半で帰ります。」と宣言したこと。先生方も理解があって、18時を過ぎると議論を収束させるために先生が介入してまとめてくださった。感謝。他の班では延々と残業しているところもあったようだ。

②2班目は1班目に同じ班だった同期が班長だったので、理解もあり、かつ1班目で18時半に普通に終えたのを見ていたので、議論が延びなかった。感謝。やはり、他の班では残業しているところもあった。

③3班目以降はどの業種・先生の班になるか希望が出せる。どの先生がホワイトそうかを事前調査により把握し、その調査を元に希望を出した。あとは祈るのみである。

「スリザリンは嫌だ! スリザリンは嫌だ!」

結果、第2希望2回、第1希望1回で、なんとか大変そうな班は免れた。感謝。

大変そうな班というのは、言いかえれば指導熱心な先生ということで、せっかく同じ学費を払うならたくさん勉強するというのもひとつの考えではある。しかし、私の今の生活スタイルでは無理だというだけだ。最後でちゃぶ台返しを食らったら目も当てられない。夜は子どもとねんねしないといけない。

④4班目は成り行きで班長になった。班長になったからには強権発動でほとんど残業なしである。

というわけで、なんとかなった。良かった。

 

以上、断片的だが実習の感想まで。